12.テッポウユリとタカサゴユリ

/ テッポウユリ(写真1)は琉球諸島に自生するユリだが、この純白で清楚なユリは欧州ではイースターリリーとして欠かせない存在とか。一方、道端や植込みの縁に繁茂しているラッパ状のユリの花のほとんどは台湾原産のタカサゴユリ(写真1(右):タカサゴとは台湾の古称)である。本種は主として種子により繁殖するが、ヤマユリが発芽してから花を咲かせるまでに5,6年を要するのに対して、1,2年で花を咲かせるほど繁殖力が旺盛である。本種は、テッポウユリに比べ葉が細く(写真2)そのためハボソテッポウユリとも呼ばれ、また、花びらの芯にエンジ色のラインが入っている点で、テッポウユリとは区別できる。最近では、花や葉の形状はタカサゴユリに酷似するが、ラインが入っていないテッポウユリが急速に広がっていると言うことであるが、これは両者の交配種で、シンテッポウユリと呼ばれている。タカサゴユリは外来種だから駆除すべきとは思わないが、繁殖力が旺盛なのでどんどん切花として摘んでも消滅する心配はない。

/写真1 テッポウユリ(左)とタカサゴユリ(右)の花(実は蕚片である)

/写真2 テッポウユリ(左)とタカサゴユリ(右)の葉の形状の違い

/ ユリ類の育種においては、無花粉(雄性不稔:花被、他の花材や衣服を汚してしまわないために雄蕊を作らせない変種)であることが品種特性として重要であり、流通や生産関係者から無花粉の新品種育成が切望されています。既に、花粉を生じないテッポウユリが市場に出ていますが、その機構はよく分かっていませんでした。そこで、新潟大学農学部(岡崎桂一教授ら)、秋田県農業試験 場、鹿児島県農業開発総合センターの研究グループは、シンテッポウユリ「あきた清ひめ」 が持つ自然突然変異で生じた無花粉特性の責任遺伝子(TDF1)を同定し、無花粉遺伝子をシンテッポウユリの品種間やシンテッポウユリから他のユリに導入する際、無花粉遺伝子の有無を PCR(遺伝子増幅器) で簡易に判定できる育種支援技術を開発しました。しかし、このような無花粉のユリが開発されたとしても、あの独特のユリの香りの楽しみがなるくなるのでは、と心配になりますが、それは杞憂でした。ユリの香りは花びらから出ているようです。花びらの中でも、先端よりも付け根の方が強く香るとか。花の香りがどこから来るのかは、花の種類によって異なるようです。 


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