10.マタタビの白化現象の謎にせまる

/前回のグリーンヒル寺田だよりではハンゲショウの葉の白化現象は葉緑体が作られなくなったことに起因することを述べた。しかし、マタタビの白化現象(写真1)はこれとは異なり、2017年に二人の高校生によって解明された。今回は、彼女らの研究成果について紹介する。本文の標題は秋田県立秋田中央高校の目黒亜依さんと佐々木円香の研究のタイトルをそのまま引用させていただいた。

/ 写真1 マタタビの白化葉 2022.6 高尾山にて 挿入図は花

/ 研究の要点は以下の通りである。

・マタタビの・白化葉の表面は白いが、裏面は緑色である。⇒ 白化葉は2層、表面の白い層(表皮組織)と裏面の葉緑体を含む層(棚上組織)からなることが判明。

・三色(青、緑、赤)の光の透過度測定:緑色の光の透過度は緑葉に比べ、白化葉の方がむしろ大きい。⇒ 白化葉は緑葉より高い量の葉緑素を含む、つまり高い光合成活性を持っている。

・白化葉の断面を顕微鏡で観察:透明な表皮組織と緑色の棚状組織が観測される。前者では三角錐状の細胞組織がランダムに配置していることが分かる(写真2左)。⇒ この三角錐状組織が太陽光を乱反射させるため白く見える(写真2右の模式図)。細かい塩や砂糖は本来透明な結晶であるが、その微結晶が光を乱反射するため白く見えることと同じ原理である。 

/写真2 左:マタタビの白化葉の断面の顕微鏡写真 断面は2層からなることが分かる。右模式図:表皮組織がランダムに配置した三角錐形の細胞組織からなるため入射した光は乱反射する。

/以上がマタタビの白化現象の機構であるが、ハンゲショウの白化の機構とは全く異なることが明らかにされた。この研究ではこの他に、白化の過程、白化葉のつぼみからの位置の特定、白化葉と昆虫との関係など、幅広い実証的研究がなされている。詳細については原論文を参照されたい。 (http://sec-db.cf.ocha.ac.jp/pdf/59_seikagaku_HB13.pdf


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