9.ハンゲショウ

/少しオーバーかもしれないが、1年の大半は山にいるほどに山好きの親友がいる。今年初夏、彼のFacebookにハンゲショウ(ドクダミ科)がアップされたのを見て、半夏生という名前にとても魅かれた。太陽年を24等分した季節を二十四節気と呼ぶが、それをさらに3分割したものを72候と呼ぶらしい。昔の人のこれほどまでに繊細な季節感のあることにいたく感心させられる。半夏生とは、24節気の夏至(6月21日から7月6日)に当たり、72候の7月1日から6日までを指し、ハンゲショウの開花期に当たるらしい。ご存じの方もあると思いうが、この不思議な植物は7月の初めに目立たない総状の白い花を咲かせるが、同時に葉の一部が白化する現象を起こす(写真1)。葉全体が白化するのもあるが、半分だけ白化する。だからハンゲショウの名は“半化粧”に由来するとの説もある。花期を過ぎると緑の葉に戻る。

/写真1 ハンゲショウの花と白化葉 挿入図は半分白化した葉を示す。2023.7.1

ハンゲショウのように、花の時期に合わせて葉(苞)の色を変える植物がいくつか頭に浮かぶ。有名なものにポインセチア(ドウダイグサ科)(写真2左)はクリスマスに欠かせない花、開花時期に葉が赤化する。また、様々な色の華やかなブーゲンビリア(オシロイグサ科)もその典型例であろうか(写真2中)。鮮やかなマジェンタの花は花びらではなく、写真のように小さな白い花を包む葉(苞)である。もう一つの例、梅雨時、高尾山の谷間にも、もちろん多摩の里山でもよく見かける蔓性のマタタビ(マタタビ科)がある(写真2右)。事実かどうかは知らないが、猫が嗅ぐと踊りだすとか。このマタタビの葉も開花時期に白化し、森の中で遠からでも大きな白い塊としてよく目立つ。開花時になぜ葉の色を変えるか興味ある現象であるが、昆虫を引き寄せるためとの通説が有力である。

/写真2 左:ポインセチア 葉が赤い花びらのように赤化 中: ブーゲンビリア 花弁のような鮮やかな葉(苞) 右:マタタビの白化葉、挿入図は花 2022.6 高尾山にて 

/それでは葉の変色機構は何か? ポインセチアやブーゲンビリアの赤化は葉の葉緑体がなくなり、赤い色素(アントシアン)が作られるからだが、白化は色素ではない。白い色素は存在しないからだ。白いとは太陽光そのもの、つまり太陽光は白色光なのである。ハンゲショウやマタタビの白化現象はどのように解釈されるのだろうか。葉の緑色は、葉緑素、すなわちクロロフィルが赤系の色(マジェンタ)の光を吸収するからその補色が緑に見えるのだ。この葉緑素が生産されなくなり、葉が白化する。葉の細胞組織間にある小さい気泡により太陽光が乱反射することで白く見える。これがハンゲショウの白化現象の原因である。

一方、マタタビの白化も同じ原理なのか、そうではない。マタタビの葉の白化機構は特異で、これを突き止めたのは高校生たちの研究であった。この研究は日本学生科学賞の最優秀賞に輝いたという。次回は彼女らの研究を紹介する。


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“9.ハンゲショウ” への1件のコメント

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    9.ハンゲショウ – グリーンヒル寺田だより~あるがまゝを楽しむ
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