5.菌根菌(その1)

/3年前の秋のある日、団地近くの八王子市の緑地帯公園のササ林をガサゴソ歩いていた折に、突然ベンガラ色(赤褐色)のグロテスクな植物が目にとまった(写真1)。何じゃこれは!早速、ウエブサイトで赤褐色、無葉緑素、植物、と検索したら、ツチアケビと直ぐにヒットした。腐生植物とあった。後で知ったことだけど、腐生植物(腐った落ち葉や木を食べて生きている)と言うのは間違いで正しくは、菌従属栄養植物と言うらしい。ここで菌とは菌根菌のことである。ツチアケビは葉緑素を持たないから光合成はできない。ナラタケから栄養をもらって生きているようだ。ナラタケの本体は腐生性の菌根菌である。枯死した樹木を腐食、分解吸収すると同時に、生きた樹木の根に寄生して生活している。一般に、菌根菌は樹木の細根に寄生して樹木から光合成産物をもらう一方で、自らは広く菌糸を伸ばして地中のリンや窒素を宿主である樹木に送り届ける、いわば、樹木と菌根菌は共生関係にある(図解1)。こ菌根菌の花がキノコであり、胞子を飛ばして子孫を残す。痩せた土地であっても草木が育つのは、菌根菌が地下に広く菌糸を伸ばして、養分を草木に届けてくれるお陰らしい。植物の80%が菌根菌と共生していることが最近ようやく明らかにされ注目されている。豊かな森は樹木と菌根菌との一つのネットワークシステムとして維持され、成長する。

/写真1 ツチアケビの実 赤いバナナ?(撮影:2020.10) 写真2 ツチアケビの花(撮影:2022.7)     

/菌根菌とはあまり耳に馴染みがないかも知れないが、様々なキノコ菌の仲間であり、酵母菌や様々なカビの仲間でもある。前者のキノコ菌は菌糸を伸ばすことで成長し、子実体であるキノコを作るが、後者の酵母などは粘っこい菌糸を伸ばすが、子実体は作らない。ツチアケビはナラタケ菌に寄生して全ての栄養をナラタケ菌から搾取して生きている、すなわち、ツチアケビはナラタケなしには生きられない完全菌従属栄養植物である。

 一般にキノコは樹木の根から光合成産物をもらい、一方樹木はキノコから土壌の窒素リン酸などと栄養をもらう、という共生関係にある。

/図解1 樹木と菌根菌(キノコ)の共生関係 


投稿日

カテゴリー:

投稿者:

タグ:

コメント

“5.菌根菌(その1)” への1件のコメント

  1. ネコちゃんのアバター
    ネコちゃん

    菌根菌とは初めて知った。素晴らしい

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です