28.赤色立体地図でみる多摩丘陵と八王子周辺

1.赤色立体地図とは

道路マップには馴染みだが、これでは地形は分からない。地形表現方法として、5万分の1山岳地図のように等高線と高度段彩図を合わせた地図がよく用いられているが、この図から立体的な地形をイメージすることは一般人には難しい。その他に、陰影図法や斜度図法があるそうだが、一般にはあまり使われていない。

これら既存の表現法には大きな欠点があったが、これを克服した画期的な赤色立体地図が2005年にアジア航測K.K.の千葉達朗氏によって発明された。図1は地形的に複雑な富士山麓の青木ヶ原の航空レーザ計測から得られた数値地図(緯度経度標高の測定値)に基づいて作成された地図である。赤色立体地図(D)では樹木は削除され丸裸の地形が立体的に見える。火山帯の細かな地形、特に線状の溶岩吹出口跡(Dの右上)や小さな火口跡(Dの左下隅)が明瞭に確認できる。これらの窪みは等高線図(A)では表現できていない。

/図1 航空レーザ計測に基づく青木ヶ原溶岩の微地形解析 富士火山, 354) A:等高線地形図,B:オルソ画像(補正平面図)C:レーザ等高線図,D:赤色立体地図(千葉達朗氏のブログ:「色立体地図―地形地質調査のための地図表現法」から引用)

この標記法の原理は簡単に言えば、標高はモノクロの明るさ(急峻な尾根は明るく、急峻な谷は暗く、正確には地上開度、地下開度と言うそうだが)で示し、傾斜度を赤色の彩度で示し、これらを重ねた図が赤色立体地図という訳だ。平野部、あるいは平な地形は薄グレーになる。千葉達朗著の(「日本の凸凹―活火山、活断層を赤色立体地図でみる」技術評論社、2011年)、はとても迫力のある地図で、見て楽しい。災害国日本の傷だらけの地形が実感できる。

2.多摩丘陵

八王子に住むようになって長いけど、多摩丘陵についてあまり意識しことはない。図2は八王子地域の赤色立体地図を示す。八王子が西は高尾山系、北は加住丘陵(滝山丘陵)、南は多摩丘陵に囲まれた盆地であることがよく分かる。かつて半世紀前までは、めじろ台、舘が丘、ゆりのき台、グリーンヒル寺田、八王子みなみ野には里山と雑木林からなるのどかな田園風景が広がっていたに違いない。今ではその面影はほとんどない。

/図2 多摩丘陵(西部)と八王子周辺の赤色立体地図

 多摩丘陵は、西の小比企丘陵(現めじろ台)から東南に向かって多摩市、稲城市を通り、横浜緑区に連なる標高150mから200mの丘陵地を指す。文献によると、多摩丘陵の成り立ちには100万年に亘る相模川の流域の変遷に係ることが地質調査の結果から明らかにされた。

 相模川の源流は丹沢山系にあるが、この丹沢由来の礫岩が現多摩丘陵の御殿峠や野猿峠などで発見された(図3)。これは相模川が40万年前には御殿峠や野猿峠から多摩動物公園に向って流れ(図2黄色点線)、旧多摩川に合流し東京湾に流れていたことを示唆している。その扇状地が隆起して30万年前には流路を南下させ、10万年前に現在のように相模湾に流れるようなったと言う。多摩丘陵が旧相模川の扇状地であったことはちょっとした驚きである。多摩丘陵の赤色立体地図を見ながら、悠久の時に思いを馳せるのもいと楽し、である。

/図3 旧相模川(40万年前)の流路の方向と御殿峠礫層の露点地点(1-10) (金子史郎、地質評論、31,8, 1985, pp.495-499)から引用。


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