4.気の毒な名前の草花たち

/寺田団地のコートでテニスした後で近くの稲荷山公園の木陰での飲み会が恒例になっている。話題は政治,文化、文芸など多岐にわたるもいつも他愛もないオヤジギャグで盛り上がっている。

かつて変な名前や可哀そうな名前の樹や草花が話題になったことがある。ヘクソカズラ、オオイヌノフグリ、クサギ、ヌスビトハギ、ジゴクノカマノフタ、ヤブガラシのなど変な名前、気の毒な名前の草花は沢山あるが、中でもヘクソカズラ(写真1)はその筆頭であろう。名前に似合わず5ミリほどの可愛い花(写真1右)を咲かせる。田植祭りの娘の菅笠に似ていることから、俗に早乙女草とも呼ばれている。この野草は万葉にもクソカズラとして読まれているとか。後にクソからヘクソ(屁と糞)へ昇格?さらに気の毒な名前に変えられた。では、それほど臭うのか?確かめて見た。葉っぱや花を強く揉んで鼻に近づけるとメルカプタン系の臭いが僅かするが、ほとんど不快感はない。ヘクソとは濡れ衣を着せられたようだ、と気の毒にも思える。これからは早乙女草と呼ぶことにする。

写真1 ヘクソカズラ(左:生垣に這いつくばるヘクソカズラ。中央:金網フェンスをよじ登るヘクソカズラ。右:ヘクソカズラの花、中心の暗紫色が特徴的である。 撮影2022.8.6)

写真2 クサギ(右:2020.11 寺田センターバス停)(左:2021.8 子の沢運動場近く)

晩秋に赤紫色の実をつけるクサギ(写真2)も、ほとんど臭い匂いは感じられない。ヘクソカズラやクサギがそれほど臭わないのは、個人的な解釈であるが、名付け親の古代人と現代人との食生活の違いあるのではないか、と妄想する。平安時代の食文化は「一汁三菜」で表現されるように、仏教の影響もあり肉は摂らない、いわば、ほとんどの者が完全なベジタリアンであったと思われる。ご存じの通り、牛や馬のような草食動物のウンチがそれほど臭くない(むしろ良い田舎の匂いがすると懐かしむ人もいる)が、一方で肉食動物である犬や猫のウンチはとても臭い。人間も同様で、肉食を主とする現代人に比べ、平安時代の人のウンチはそれほど臭わなかったのかも知れない。したがって、古代人はヘクソカズラの淡い臭いであっても敏感で強く反応したのではないか、というのが私の解釈である。

 グリーン部会の除草作業において、厄介な雑草としてヤブガラシである。これは俗名ビンボウカズラとも呼ばれ、成長が早く、手入れの行き届かない家の庭や芝生は瞬く間にこのカズラで覆われる。これは非常に繁殖力のあるツル性植物で、生垣や芝生の雑草としてどこでも生えていてとても厄介な存在である。テニスコートのコンクリートの割れ目からも芽を出し、高いフェンスをよじ登る。かの竹ヤブですら枯らしてしまうほど繁殖力があるので、ヤブカラシと名付けられたとか。ヤブガラシの場合、名は体を表す、と思う。  

 もう一つ厄介な雑草はヌスビトハギである。この野草はマメ科植物で当団地のあちこちに生えていて、秋にはハギに似た可愛い花(写真3左)を咲かせ、晩秋にマメを付ける(写真3中央)。この実の表面には、かぎ状の毛がはえていて、この毛がマジックテープの役割をはたし、衣服に強力にくっつく”ひっつき虫“(写真3右)となって遠くに運ばれてその生域を広げる。名前の由来は、植物学者の牧野富太郎によると、豆の形がツマサキ歩きで忍び足のドロボウの足跡に似ていることからが名づけたと言われているが、鞘の中の種の数が3,4つある変種をしばしば見かける。もう足跡には似てないが、他の植物の生域を浸食、つまりドロボウして繁茂する雑草に思えてならない。

/写真3 ヌスビトハギはマメ科の多年草、夏に花を咲かせ(写真左)、秋にマメを実らせ(写真中央)、このひっつき虫にやられる(写真右)と、取除くのに大変苦労する。


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