23.タラノキと根挿し

/タラノキは北海道から九州に分布するウコギ科の低木落葉樹。伐採跡地など日当たりの良い開かれた場所を好む先駆的植物である。幹や葉には沢山の鋭いトゲがあり、食害から身を守っている。1mにもなる大きな複葉は、あまり枝分かれせず、茎の先端にまとまってつく(写真1左)。長い葉柄は枝にはならず、初冬にはすべて落葉し、主幹にU字型の葉柄跡と休眠中の芽を残す(写真1中)。冬に落葉した雑木林の中に槍の様のようにまっすぐ伸びた佇まいは独特である。春いち早く光を確保するためにひたすら高く伸びる戦略をとっているらしい。1年で1, 2メートルになるほど成長が早い。

/写真1 左:タラノキの樹形 中:タラノキの若木の木肌とトゲ 右:タラの芽

/新芽のタラノメ(写真1右)は春の山菜の王様と言われるくらい、日本人はタラノメが大好きである。天ぷら、ゴマ和えなど、その味わいはほろ苦く、独特の大人の食感がある。一番の新芽は幹の先端に出るが(写真1右)、これを摘み取ると先端に近いところから順番に第2番、3番目と新芽が出てくる。これらも摘み取ってしまうと幹は枯れるが、翌年にはその根から新しい芽がでると言われる。虐めると芽を出すらしい。天然のタラノメは大量に収穫できないので、タラノキの成木を節目毎に短く(20cm程度)切ってふかし栽培によって芽を吹かす(写真2左)。たくさんタラの芽が獲れる(写真2右)。

/写真2 左:タラノキの幹を節毎に切り、水に浸す、湿らせた土でもよい。 右:1か月半後に発芽したタラの芽の収穫 Good !

/3,4年前にいわゆる根挿し法によって沢山のタラノキを増やした。冬の寒さも和らいだ3月の初めに山からタラノキの根を取って来て、10cmに切り、プランターに根挿し(根伏せ)する。4月になると芽が出てくる(写真3)。これを山に移植する。伏かしも根挿しも、茎や根を切る、つまりひどく傷つけられることで芽を出すタラノキの再生能力に感服する。

/写真3 左:タラノキの根の根挿し(根伏せ)。 右:1か月半後に発芽したタラノキの若葉

/根挿しは広義の挿し木の一方法である。根から芽が出る、つまり根からの茎や葉の再生はウコギ科の特徴である。バラやアジサイも根挿しで増すとか。茎挿し(または挿し穂)は一般的でサクラ、アジサイ、ジンチョウゲなどその他多くの植物の増殖に利用されている。野菜ではサツマイモの苗はこの方法で育てられている。キュウリもトマトも挿し穂で簡単に増やすことができる。他方、葉挿しはあまり一般的ではないが、サボテンの増殖にはこの方法が獲られている。挿し木は無生繁殖法で、同一個体のコピーを作る。ご存じのように、ソメイヨシノは種を付けないので日本中のすべてのサクラは、1本の突然変異種から挿し木によって増殖させたクローンである。

/ 植物は動物とは異なり、移動できない。動物、昆虫などに食べられ、また厳しい外部環境の変化にも耐えなければならない。そのため植物は個体の維持と増殖のために優れた再生機能を獲得してきたと考えられる。挿し木もこの再生能力を利用した繁殖方法なのである。これはゲーテの「全ては葉である」に通じる。


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コメント

“23.タラノキと根挿し” への2件のフィードバック

  1. shumatsuのアバター
    shumatsu

    自分の近くにタラの芽をとれるようにしているのは、すごい。
    ゴルフ中間は春になると、ゴルフ場でゴルフそっちのけでタラの芽を探します。似たような木でウルシがあるので間違えると大変。

  2. Hei8のアバター

    ブログサイトにご訪問いただき有難うございます。
    山菜は季節の味、とりわけタラの芽は貴重ですよね。5,6個もあれば十分堪能できます。ふかし栽培だと多く獲れますが、苦みが少ないようです。やはり天然ものに比べると野性味に劣るようです。
    Hei8

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