3.武蔵野と潜在自然植生

武蔵野の原風景のイメージは国木田独歩の「武蔵野」によって定着したと言われている。コナラ・クヌギを中心とする落葉広葉樹の明るい雑木林の谷戸、里山の田園風景である。遡って、万葉集の時代では、武蔵野はマコモ、萩,薄、女郎花の草木茂る住む人なき原野だったとか。さらに遡り、古代原始の森の植生はどんなものだったろう。植物生態学者の宮脇昭博士(令和3年没)は古代の森を形成したと思われる潜在的自然植生を調査研究し日本植生誌(全10巻)を著した。潜在自然植生とは、人が全く手を加えないとき、その土地と気候風土に応じて育つ植物、つまりその土地本来の樹木を言う。全国通津浦浦殆んど人工林で覆われている現在、如何にして潜在自然植生を見つけ出すか? 宮脇博士は、そのヒントは鎮守の森にあることを示した。古い神社仏閣には数百年、数千年に亘って人の手が入っていない森が今でもある。これが潜在自然植生という訳である。近くの川尻八幡宮の境内や森を訪ねてみたらよい。樹齢500年を超えるウラジロカシ、スダジイそしてタブノキなどの沢山の巨木(右写真)が出迎えてくれる。この森を散策するのが好きだ。神々しい気分になる。

ウラジロガシ@川尻八幡宮
樹齢500年? (2022/1/12)

 宮脇博士のもう一つの大きな功績は植樹のための「宮脇方式」の提唱とその実践である。彼は、日本全国、全世界をまたに駆けて植樹活動され、荒地の森林作りに奔走された。宮脇方式とは、その土地の潜在自然植生群を探索し、それらを中心に多数の樹種を混ぜて植樹する混植・密植型の植樹方式である。こうすることで、植物は生存競争によって早く伸び、短期間にミニ森林が形成されるという訳だ。私は最近、当団地にこの方式が採用されたと思われる緑地帯があることを発見して少し興奮した。南駐車場の防音緑地帯である。約3メートル幅の長い緑地帯はカシの木を中心に密に混植されており、宮脇方式によるミニ森林に間違いないと思う。何だか嬉しくなった。


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