20.フィボナッチ数列と植物(その2)

/元テニス仲間で、今は根っから家庭菜園家である親しい友達がいる。いつも新鮮な野菜と働けることの喜びをいただいているが、時折珍しい野菜もいただく。冬も明けない寒い1月末のある日、ブロッコリーの仲間のロマネスコをいただいたことがある。初めてこれを見たときにその幾何学的な美に驚いた(写真1)。フラクタル構造の美しさだ。この構造は、写真1―3に示すように、どんな部分をとっても全体と相似形になっていることが分かる。このフラクタル構造は、自然界で良くみられる造形であるが、ロマネスコはその完全形の一つなのだ。

 今回はフラクタル構造が主題ではない。この数列については花びらの数に関するブログNo.17においてすでに述べたが、今回はロマネスクの小花などの配置の仕方について考える。ロマネスコの表面の出っ張り(実は蕾の塊)がラセン状に並んでいるのが分かる。写真1で示す赤いラセンは外側から内に向かって右巻き、黒いラセンは左巻きに並んでいる。これら左右のラセン状の並びは1回りでそれぞれ13本ずつある。すなわち、この13はフィボナッチ数列(1, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55, 89, …….)の一つに当たる。

/写真1 左:ロマネスコの全体像  中:ロマネスコの一部の拡大図 右:反転拡大図 2020.1.19

/写真2はさまざまな松ぽっくりを示す。うろこ状のひだ(鱗片)はどんな松でも軸に対してラセン状に付くという特性がある。白いラセンは右巻き、青のラセンは左巻きである。シュガーパイン(カルフォルニア西海岸に生息する世界一大きな松でで大きな松ぽっくり)では、白いラセンは13本、青のラセンは全部で8本ある。ドイツトウヒ(写真のについても同様に13本と8本である。一方、日本の黒松では、それぞれ8本と5本である。これらの数もフィボナッチ数に当たる。

 もう一つの例は、キク科の種子の並びである。例えば、ヒマワリの種子の並びを見てみよう(写真2右)。種子は右巻きと左巻きのラセン状に整然と並んでいることが分かる。外側から中心に向けて時計回りと反時計まわりラセンがあるが、前者(黄色)は、全体で55本、後者(赤いラセン)は全体で34本ある。これらはいずれもフィボナッチ数列なのだ!

/写真2左 いろいろな松ぽっくり(上から順に日本の黒松、ドイツトウヒ、シュガーパイン)(2023..8.7)     写真2右 ヒマワリの種子の並び(ブロガーTruckbackさんからの引用)

 結論として、フィボナッチ数は種子を空間的に無駄なく、限られた空間に最密充填で配置するための最適な幾何学的な要件なのかも知れない。与えられた空間でできるだけ多くの花(種子)を付けることになり、結果として、子孫の繁栄に繋がる。シマウマやスズメダイなどの縞模様もある微分方程式の解として説明されると言う、植物の形はとても複雑であるが、数学との意外な関係はちょっとした驚きである。


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